受信して音質を確認します。 老舗の手堅い設計で、聴きやすい穏やかで明瞭度の良い音質です。 しかし、やや低域の伸びが不足し、低域のみならず高域も開放感が少なく、綺麗だけれどFM Tunerらしい音と言う印象です。 周波数特性を実測すると、20Hzまで平坦で問題はないと思われます。しかし、低域遮断周波数の考察で0.2Hzで-3dBの特性でないと、20Hzで位相が変化し実在感のある低音が得られません。実回路を読み取りシミュレーションにより確認します。-3dBは1.653Hzで、165Hz以下で位相が変化し伸びやかな音の出方は期待できません。 グラフ上段は振幅特性、下段は群遅延特性で、赤線はオリジナル、青線は改善後を示します。 |
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LA1267検波出力からの容量値を見直し、低域遮断周波数を0.2Hz以下に再設定しました。 C83; 22uF→470uF, C92; 10uF→47uF, C113, C114; 10uF→47uF 楽音に含まれる演奏の場の雰囲気が感じられるようになり、全帯域で開放感が上がります。しかし、帯域を広げたことで、回路内で起きている各種の干渉による劣化も聴き取れるようになり、全体的に締りのない緩くモタついた聴こえ方になりました。 この音の変化は、主に低域で干渉が起きています。理論的に正しいことを行ったのに聴感でいい結果が得られない原因の一つです。 FM標準信号発生器を20Hzで変調し信号系以外の各部に発生する20Hzを観測します。 FM System IC LA1267の基準電圧Pin22に変調成分が観測できます。この電圧は次段のIC3の基準電圧も兼ねており音の出方に大きな影響を与えます。まずはC56; 100uF→470uFに増やします。比率で変調成分は少なくなり聴こえ方は改善されますが不十分です。IC3の基準電圧をシャントレギュレータで+12Vから生成し印加します。作成したプリント基板を用いTL431で3.78VとなるようにR7; 2.2kΩ、R5; 1kΩ+100Ω+47Ωとし負荷電流を合わせ3mAとなるようR1; 2.7kΩ供給します。 これにより、すっきりとした聴こえ方になります。 さらにLA1267の電源供給もシャントレギュレータを用い聴こえ方を改善します。元電源電圧が12V、LA1267の動作最低電圧は8.5Vなので1Vをシャントレギュレータで使うことにします。R7; 2.7kΩ、R5; 6.8kΩ+2.2kΩにすると10.8Vが得られます。LA1267の消費電流を実測したところFM時が最大で23mAなので、TL431と合わせ30mAとなるようR1; 39Ωとします。 |
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