これまで3種類のTrans Linear Bias AMPを製作(TLB1、TLB2、TLB3)し、通常Bias AMPでは聴いたことのない瑞々しく活の良い音色に魅了されています。高調波歪率を測定しますと、測定系の限界もあり、特段優位性は見出せませんでした。TLBの大きな特徴は、終段のNPNの領域でもPNPはカットオフしないことです。常にNPNとPNPがバランスを保ちます。この動作は終段の電流を観測することやシミュレーションで確認できます。終段のNPNとPNPは言うまでもなく個別の素子です。取り付けられている放熱板を叩いてみると同一の音色ではありません。通常Biasでは、NPNとPNP交互にON-OFFすることで異なる音色が切り替わります。TLBでは、カットオフしないことで急激な音色の切り替わりが目立たないことが好ましい聴感の理由の一つではないかと推測します。 さらにこの聴感をもたらす優位性が見出せないかを検討しシミュレーションによる工夫を見出しましたので紹介します。 シミュレータに備わっている任意の信号源の電圧を変化させ、任意の点を観測するDC解析機能を使います。対象増幅回路は、直流増幅器に修正し、入力にDCを印加し、NFBで設定した増幅度の出力を観測します。負から正に入力電圧を変化させれば反転増幅機なので右上がりの直線となります。残念ながらこの結果からは、正しく増幅していること以上のことはわかりません。そこで、入力信号をNFBで設定した増幅倍して出力から引けば、非直線性の影響(直線性誤差)が見えてくるのではと考えました。終段エミタフォロア部を通常BiasとTLBで比較します。 直線性誤差 = V(出力)- V(入力)* k - V(オフセット) k ≒ 利得(エミッタフォロアなので1以下) kは入力0Vの時にグラフが水平になりよう微調整 通常Biasのシミュレーション回路図です。Biasは電池に置き換え、TLBと合わせ概ね210mAのアイドル電流に設定しています。 |
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